メイ首相の大勝利

 メイ首相が率いる保守党が過半数の議員を占めていたのに、何故総選挙を行なうのかとその一報を聞いたすぐは真意を計りかねていた。

 しかし、選挙期間に入ってからのメイ首相の様々な行動と発表した公約の内容で、徐々に本心(策略)が見えて来た。これは英国に世紀を超えて脈々と引き継がれている政治手法(謀略、戦略、二枚舌、三枚舌)の実行なのだと。

 今回は「負けるが勝ち」の手法と云ったところか。投票日を待たずして、期間の中頃で保守党は過半数割れする(メイ首相がそうさせる)と確信した。

 話は昨年6月のEU離脱が決まった国民投票へと遡る。当時から現在に至るまでの流れを簡単に箇条書きにする。

◎キャメロン辞任(キャメロンはEU離脱反対)

 自身の任期の残りを任命する形でメイを首相に指名。 

◎メイもEU離脱には反対の考えだった

 しかし、国民が決めた離脱交渉をハードに進めると表明。

◎昨年末あたりに、選挙で選ばれていない首相がEU離脱交渉をするのは力不足だとの世論が上がった(これも謀略の内かもしれない)

◎今年、メイ首相、EUに対し離脱すると正式発表。やはりハードに進めると表明。

◎メイ首相、保守党は過半数でも更に多くの国民の支持を得て、選挙で議員数を増やし、大きな力を貰えたらもっとハードに進められると発言し、選挙へ

◎選挙期間中のメイの行動・公約

  1. テレビ・ラジオ等生中継の各政党の党首討論を欠席。保守党からは代理の議員が出席した。その時間、メイは「私にとっては有権者の声を直接聞く事が大事」と言って田舎町へ行き、市民と対話・握手。(この姿が国民には傲慢に見えたとの新聞記事)
  2. 高齢者の介護費用負担を増やす公約に変更。(これで選挙で保守党に入れていた人がかなり離れた。もしくは高齢の為応援を反故して選挙へ行かなかった。)
  3. EU離脱をハードに進めたいと言って選挙を実行したはずなのに、テロ問題ばかりに終始してEU離脱交渉の中身についての議論を避けた。(これが弱腰なのでは?と支持者から見られた。強い指導者としてのメイの言葉を期待していた国民はありきたりな言葉を語るメイに失望)

◎選挙

 保守党過半数割れ

 自ら選挙期間中に限って数々の失態を見せつけ敗北を招き、「ハードに進める」を出来なくした。少数政党で10議席そこそこの北アイルランドDUPと連立を考えているようだ。DUPは『ソフト離脱』の考え。ソフト離脱とは、簡単に言えば「EU内の人々の出入りは今まで通り自由に」という指針だ。

 しかし、これこそがメイ首相の本懐ではないかと推察する。(ちなみに、もう一つの思惑についてはこの記事を書く前に投稿してしまったのでリンクを貼っておく。)

 昨年6月のEU離脱結果の国民投票後、キャメロン首相が責任を取って辞める際に、メイを指名した時点で、すでに今回の脚本が仕上がっていたとすれば英国貴族院議員の方々には脱帽である。

 メイ首相の大勝利と言えるだろう。