「DUP連立」は成されず、伏線の一部である

 メイ率いる保守党とコービン率いる労働党「ソフト離脱の方向へと極秘協議をしている事が判明した」との産経ニュースが6月15日に報じられ、その後、BBCでも報じられ始めた。(産経が第一報ということは無いと思うが)

 移民規制をハードからソフトへ修正し、離脱交渉で英国がEU関税同盟に留まる事をハモンド財務相が主張している。(させているのかもしれない。)

 私がこれに関して記事にしてきたものは以下の通り。

 

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 ここで連日投稿してきた表現からすると逆を言っているかのような述べ方になってしまうが、そもそも北アイルランドDUPと"連立を組む"等と云う事は真剣に考えていない」と見ている。

 DUPは『中絶反対』『同性婚反対』と頑なに掲げている政党なので、保守党との折り合いが悪く、選挙戦術上連立については無理がある。

 おそらく、保守党内でも元々離脱反対の議員達が少なからず居るので、「DUPと組むくらいなら」と今や最大野党となった労働党と真剣協議に踏み込む流れを作り始めるだろう。この「DUPと組むくらいなら」のパンチ力を以って、労働党との協議について自らの支持者達への言い訳が出来ると考えているはずだ。

DUPと組むぞ組むぞ詐欺」とでも言おうか。真面目な連立では無い訳だが、そのショックは保守党支持者達にとって絶大であると見た。

「共謀罪法」成立に思うこと

 各報道関係、学者、フリージャーナリストの方々の懸念・反対をよそに、あっさりと可決した共謀罪法。

 過去の「治安維持法」の名のもとに為された数々の弾圧――その記憶が有る人達の警鐘を目にする事はあっても、日常生活の中でこの法案について話題に上る事はほとんど無い。

「自分は政府の言う一般人なので、問題にすることはないし、むしろ悪だくみする人達を取り締まりやすくなるらしい法案なので、安心になる。」…というように受け止められているのかもしれない。

 先の原発事故後、大人しい日本人がデモに立ち上がり始めた。政府に対して民意の表し方は選挙での投票とデモだ。

 国会前でのデモを、「テロだ」と言ってのけた国会議員が居る今の日本社会を考えると、たとえそのデモが多くの賛同を得られないような事で有っても、一般人の民意と賛成する自由や反対する自由までもを事前に摘み取るような事にはなって欲しくない。今回の法案成立はその様な可能性を持っている。

 いかなる法律も真に適切に運用される事、そして一般人が心おきなく一般人で居続けられる様に願う。

メイ首相を"勝たせた"英国の貴族院議員

 連日英国の選挙について取り上げるが、今回も以下の投稿の続編となる。少々蛇足感は拭えないが、雑感として保存・公開しておこうと思う。

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 昨日の記事はメイ首相の一人勝ちのように表現した箇所が強く出てしまったが、当然メイ首相一人で事を成した訳ではなく、英国貴族院議員が知恵を貸したものと捉えている。

 貴族院議員の暗躍を無視して英国政治は語れない。英国で議員制政治が始まった時から現在まで存在する彼らは、人数はそれ程多くは無い。しかし、終生議員の特権故に、自国(英国)の政治を完全に把握し続け、常にその舵取りを行なっている。

 万年少数議員の労働党が今回の選挙で大躍進し、「変人」と言われてきたコービンが党首として注目された事自体も、実はそうなりやすいよう事前に選挙制度変更へと差し向けたのも貴族院議員(貴族院議員だけに与えられた範囲の特権をフル活用して労働党を育てた)である。

 世界情勢、英国の立ち位置、自国の利益、そして英国民の現状と民意。それらあらゆる事柄を勘案して英国の将来の為には今何をすべきかを考察し、ここぞと云う時には陰謀と揶揄される程の策を講じる。

 それが是か非かの議論へ持ち込めば反発も多数見受けられると思うが、このように成熟した議員を持っている英国民が羨ましい限りである。

メイ首相の大勝利

 メイ首相が率いる保守党が過半数の議員を占めていたのに、何故総選挙を行なうのかとその一報を聞いたすぐは真意を計りかねていた。

 しかし、選挙期間に入ってからのメイ首相の様々な行動と発表した公約の内容で、徐々に本心(策略)が見えて来た。これは英国に世紀を超えて脈々と引き継がれている政治手法(謀略、戦略、二枚舌、三枚舌)の実行なのだと。

 今回は「負けるが勝ち」の手法と云ったところか。投票日を待たずして、期間の中頃で保守党は過半数割れする(メイ首相がそうさせる)と確信した。

 話は昨年6月のEU離脱が決まった国民投票へと遡る。当時から現在に至るまでの流れを簡単に箇条書きにする。

◎キャメロン辞任(キャメロンはEU離脱反対)

 自身の任期の残りを任命する形でメイを首相に指名。 

◎メイもEU離脱には反対の考えだった

 しかし、国民が決めた離脱交渉をハードに進めると表明。

◎昨年末あたりに、選挙で選ばれていない首相がEU離脱交渉をするのは力不足だとの世論が上がった(これも謀略の内かもしれない)

◎今年、メイ首相、EUに対し離脱すると正式発表。やはりハードに進めると表明。

◎メイ首相、保守党は過半数でも更に多くの国民の支持を得て、選挙で議員数を増やし、大きな力を貰えたらもっとハードに進められると発言し、選挙へ

◎選挙期間中のメイの行動・公約

  1. テレビ・ラジオ等生中継の各政党の党首討論を欠席。保守党からは代理の議員が出席した。その時間、メイは「私にとっては有権者の声を直接聞く事が大事」と言って田舎町へ行き、市民と対話・握手。(この姿が国民には傲慢に見えたとの新聞記事)
  2. 高齢者の介護費用負担を増やす公約に変更。(これで選挙で保守党に入れていた人がかなり離れた。もしくは高齢の為応援を反故して選挙へ行かなかった。)
  3. EU離脱をハードに進めたいと言って選挙を実行したはずなのに、テロ問題ばかりに終始してEU離脱交渉の中身についての議論を避けた。(これが弱腰なのでは?と支持者から見られた。強い指導者としてのメイの言葉を期待していた国民はありきたりな言葉を語るメイに失望)

◎選挙

 保守党過半数割れ

 自ら選挙期間中に限って数々の失態を見せつけ敗北を招き、「ハードに進める」を出来なくした。少数政党で10議席そこそこの北アイルランドDUPと連立を考えているようだ。DUPは『ソフト離脱』の考え。ソフト離脱とは、簡単に言えば「EU内の人々の出入りは今まで通り自由に」という指針だ。

 しかし、これこそがメイ首相の本懐ではないかと推察する。(ちなみに、もう一つの思惑についてはこの記事を書く前に投稿してしまったのでリンクを貼っておく。)

 昨年6月のEU離脱結果の国民投票後、キャメロン首相が責任を取って辞める際に、メイを指名した時点で、すでに今回の脚本が仕上がっていたとすれば英国貴族院議員の方々には脱帽である。

 メイ首相の大勝利と言えるだろう。

先のUKでの国民投票 雑感

 先のUKでの国民投票で、EUからの離脱との結果が出た後、スコットランドでは離脱反対の声が多く、「それじゃあUK(英連合王国)から抜けて、元のスコットランド国へと独立して、その上でEU加入しよう」という声が上がりだした。

 その声に応えるスタージョンが注目され始め、力を付けてきていた。(特に、今年に入ってメイ首相がEUからの離脱を正式発表してからは、「スコットランド独立の国民投票を」との民意が高まって来ていた。)

 ここで特筆すべき点は、『英国の電力を多く賄っているのはスコットランドに在る原発』ということだ。(イングランド

 今回の結果を見て、メイ首相が選挙に打って出たもうひとつの目的はここに有るかもしれないと思えて来る。(本命かも)スコットランド民族党が19議席も失ったが、保守党が13議席も当選している。全体では保守党が減ったが、唯一、スコットランドでは大躍進!保守党長年の夢だったスコットランドでの大勝利。相当、高度な選挙活動をしたと思われる。